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【海外交通事情報告 第53回】 アメリカ カリフォルニア州で進む“CASE”対応 |
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今後の自動車業界で勝ち残るために不可欠な技術開発やサービス領域を表すキーワード“CASE”※。メディアでも関連業界の枕詞のように扱われていることもあり、耳馴染みになりつつあるのではないでしょうか。 ※“C”:Connected(つながる)、 “A”:Autonomous(自動運転)、 “S”:Shared(共有)、 “E”:Electric(電動化)
組織的な電動化推進活動 カリフォルニア州では関連方針の立案や規制制定を州政府機関「California Air Resources Board(CARB)」が行います。同機関からの委託を受け、補助金プロクラムのローカルベースでの実施、各施策の啓蒙活動を「Center for Sustainable Energy(CSE:サンディエゴ市)」などが実行します。 このように各機関での役割、機能が明確となっており、脱炭素社会に向けた真摯な取り組み、着実な進展が伺えました。EVなどの低排ガス車両や充電インフラの推進にとどまらず、サンディエゴ市では再生可能エネルギーの目標値(2035年までに市内全ての電力を再エネ化)を掲げ、駐車場等へのソーラーパネル敷設に対する資金支援を行っています。 一方で、州政府が積極的にハード面の普及を促していますが、ユーザーサイドでは理解が浸透しておらず、啓蒙活動の重要性を実感しました。
写真① カリフォルニア州交通省駐車場の充電用ソーラーパネル(サンディエゴ市)
公道走行実現に向け順調に進む自動運転バス実証実験 カリフォルニア州内のベイエリア9郡を管轄し、地球温暖化ガスや大気汚染物質の排出源に対する規制・監督等を担う「ベイエリア大気品質管理地区(Bay Area Air Quality Management District:BAAQMD )」での取材では、2023年の公道での実用化を前提に実証実験中で、これまで運行に係る事故やトラブルは特に発生せず順調に進捗していることが確認されました。 実は2017年にBAAQMDに訪問した際は、実用化時期を「早ければ2018年後半」としていましたが、現在の計画では前述のように2023年に変更されています。
シェアリングサービス…ユーザー利便性確保第一で当局が課題に対応 カリフォルニア州ではすでに様々なモビリティサービスが一般に浸透しています。それに伴い生じた諸問題に対し、ユーザーの利便性を確保すべく当局が対応した二つの事例をご紹介します。 例1:ライドシェアリング(サンフランシスコ国際空港に専用駐車場設置) サンフランシスコ国際空港は、ライドシェアサービス提供企業(ウーバー、リフトなど=Transportation Network Companies:TNC)の乗入数増加に伴い、構内の渋滞が悪化しました。 これに対し、同空港の運営母体である「Landside Operations San Francisco International Airport」は、独自のアプリを開発して、TNCの実態を把握、そして2014年よりTNCから空港使用料の徴収を実現しました(1回あたり4.5ドル)。 さらに、出発フロア付近に専用ドロップオフ(降車)エリアが設定されている他、同空港隣接地にはピックアップ待機車両用の専用スペースがあり、取材時には当該スペースに入るための渋滞が発生していました(写真④)。 ライドシェアサービスは、今や同市の玄関口である同空港へのアクセス手段としても、中心的な役割を担っていることの証左と言えます。
例2:電動キックボードシェアリング(GPSによる速度制御) 電動キックボードシェアリングは、今回訪問したサンディエゴ、サンフランシスコ両市にてその普及が確認できました。ユーザーにとって使い易い乗り捨て型のシェアリングでありながら、充電量の少なくなったボードの回収や再配置に大きな労力が不要であるといった事業運営面での特長がそれに寄与しているとみられます。 加えて、安全面でも配慮されています。以前は速度規制が設けられておらず、その普及に伴い歩行者との接触事故が多発しました。これに対し、通勤時間帯や通行人の多い場所はGPSとの連動により8km/h以下に抑える規制が設けられました(通常時は最高速度24km/hで走行可能)。 筆者もサンディエゴで、実際にウーバーのアプリを使って電動キックボードを利用してみました。初めて利用する場合でも、アプリでの丁寧なガイドによって迷うことなく速やかに手続きを終えることができました。 上述のことから、ファースト/ラストマイル対応のソリューションとして、クルマや自転車よりも有効なモビリティとなる可能性が感じられました。しかし、日本国内で電動キックボードを公道で走行するには、道路交通法による制約があります。
日本ではCASEやMaaSへの対応で「100年に一度の大変革期」と危機感を持って言われていますが、現地ではそのようなキーワードが無くても、ユーザーが望むサービス、環境づくりを着実に進めていく、行政はその邪魔をしないという本来の民主主義を垣間見ることができました。 その最たる事例がサンフランシスコ国際空港がウーバーなどのシェアリングサービス台頭に対し、空港でのピックアップ場所を公的機関が整備するという、日本では考えられない施策を実施していることではないでしょうか。 翻って日本では「100年に一度の大変革期」と声高に唱え、「実証実験」という一穴から立ち向かっていかないと規制の壁を開けられず前に進めない、そのような印象を抱いた取材でした。
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