Traffi-Cationトップページ > Traffi-Cation 2020 春号(No.53) | ||||||||||||||||||||
【人、クルマ、そして夢。 第22回】交通コメンテーター 西村 直人 サポカー補助金にみる社会受容性 |
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いわゆる自動ブレーキという呼び名を改め正式名称としての認知を目指す「衝突被害軽減ブレーキ」と、アクセルペダルとブレーキペダルの踏み間違いなどうっかりミスによる誤った運転操作の抑制を目的とした「ペダル踏み間違い急発進等抑制装置」。
このサポカー補助金は、「65歳以上の高齢運転者による衝突被害軽減ブレーキやペダル踏み間違い急発進等抑制装置が搭載された安全運転サポート車の購入等を補助する」(原文まま)ために使われます。 補助対象車は、衝突被害軽減ブレーキとペダル踏み間違い急発進等抑制装置の両方を搭載する車両を令和元年度中に満65歳以上となる高齢運転者と、満65歳以上となる高齢運転者を雇用する事業者が、登録車を購入する際に10万円(軽自動車7万円、中古車4万円)が補助されます。 こうした背景を受け、全国各地で “衝突被害軽減ブレーキ体験会” なるものが開催されています。実体験を通じた周知徹底は何よりもすばらしいことです。一方で肝心の伝えるべき要素やカリキュラムに不足があるようにも感じました。 ところで、1991年度から現在も続く国主導の「ASV推進計画」に描かれている衝突被害軽減ブレーキ像では、警報&ディスプレイ表示段階で「ドライバーがブレーキ操作など回避操作を行うこと」を目的としていて、システムが行う自律自動ブレーキに頼ることなくドライバーが危険な状態に近づかないようにすべきであると明文化されています。このことは29年経過した今でもまったく変わりありません。 その安全哲学を受け継いだ冒頭の体験会では座学も行われていて、システムによる自律自動ブレーキを過信せず、ドライバーが回避操作を行ってください、と丁寧な口頭による説明が行われています。そうしたことから同乗体感された方々は口々に「自動で止まってくれて良かった」、「こんなにすばらしい機能なら装着車に買い換えよう」と前のめり気味に。 しかしこれでは、機能限界を理解頂いた上での正しい普及とは言えません。いわゆる「社会受容性」との兼ね合いです。この社会受容性は、2020年5月23日までに施行されるSAE Lv3容認文言を含んだ改正道路交通法とも密接な関係があります。 交通コメンテーターである筆者が考えるカリキュラムの不足点とは、警報&ディスプレイ表示の段階でドライバーがブレーキ操作を行うと、システムによる自律自動ブレーキと比較して、どれだけ停止距離に差が生まれるのかを体感することです。これは65歳未満のドライバーにとっても重要です。 これにより、 ”自分にとって” 急ブレーキが踏みやすいクルマが選別できるようになることから自ずと社会受容性も高まり、さらなる交通事故数の低減が期待できると考えています。
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