Activities

Traffi-Cationトップページ > Traffi-Cation 2020 春号(No.53)

【特集】キーワード:エネルギー・防災・規制緩和

新たなクルマ社会における給油所の将来

 日本国内における給油所の数は、ピーク時の1994年度に比べて半数に減っています。これは規制緩和に伴う価格競争やガソリン需要の減少など、給油所を取り巻く経営環境が厳しくなっているためです。

 ただ給油所には、ガソリン車、ディーゼル車といった大多数を占める車の燃料等を供給する役割があり、日常生活に欠かせない石油製品供給拠点です。また災害時には燃料供給の拠点ともなります。
 そのため、給油所の減少は地域にとって大きな問題です。

 このように社会インフラとして重要な役割を持っている給油所の事業環境は、ガソリンの内需減少等が進む中、これからも深刻化していくことが予想されます。給油所はどのようにして事業存続を図っていけば良いのでしょうか。

 これからのクルマ社会における給油所存続の課題、求められる規制緩和について考えます。

給油所の減少とその背景

給油所数はピーク時から半減

 日本国内の給油所の数は、1994年度末の6万店をピークとして24年間減少を続け、2018年度末には3万店と半分以下になっています(図1)。
 全国で一日に3.5ヵ所の給油所がなくなっていたことになります。

図1 給油所数の推移

図1
 

給油所数減少の要因・1【法改正の影響】

①法改正による販売競争の激化と廃業の増加

 1996年にガソリンの輸入が自由化されて、海外の割安なガソリンを輸入できるようになり、さらに1998年には、余分なサービスを省いて人件費を削減し、効率的な経営を可能にするために、セルフ方式の給油所が解禁されました。

 これらの法改正は、ユーザーにガソリンの購入価格の低下をもたらした一方、事業者にとっては価格競争の激化、採算の悪化につながり、競争力のない給油所を中心に廃業が増加した要因となっています。一方で大規模給油所は、より大型化するなど、規制緩和をきっかけに給油所の淘汰が始まりました。

 

②タンク改修の義務付け

 2011年の消防法改正によって、腐食のおそれが高い一部の地下貯蔵タンクについて、危険物の漏れ防止対策を行うため、給油所の下に直接埋設されている40年を超えたタンクの改修が義務づけられました。

 改修には3千万円以上の費用が必要であり、それだけの投資ができなかったり、借り入れの返済予定が立たなかったり、さらに工期もほぼ1ヵ月かかり、その間は休業しなければならないなど、廃業を決意する引き金になったと指摘されています。

 

給油所数減少の要因・2【経営環境】

①ガソリン販売量の減少

 給油所の淘汰が始まった1990年代後半以降も、ガソリン販売量は増加し、自由な移動を支えてきました。しかしその販売量は2013年度から6年連続で減少し、2018年度から5年間でさらに約11%減少すると予測されています(図2)。
 これは、燃費の良いクルマが市場投入されてきていること、また電動車両が増えてきていることなどによるものとされています。

図2 日本国内向けのガソリン販売量推移

図2

 

②利益の出にくい価格構造

 ガソリンの価格は、その約半分を税金が占めています。残りの4割強は仕入れ値、1割弱が会社の利益です。
 例えば1リットル当たり140円だとすると、利益は10円程度というところです。ただし、会社はこの利益から店舗の運営費(経費)や人件費を支払わなくてはなりません。
 したがって、その収支は、ほんのわずかだと思われます。

 

③経営者の高齢化・後継者不足

 経営者の高齢化と後継者の問題は、廃業を考える理由のひとつとして常に上位に挙げられています。
 特に地方部の中小事業所で多くみられ、給油所数減少の要因となっています。

給油所の存在意義

 給油所数の減少が、なぜ問題になるのでしょうか。

 電気自動車の販売が増えてきているとは言え、日本で走っている自動車の99.8%はガソリン車やディーゼル車といった給油所を利用する車です。
 今や自動車は生活に欠かせないものです。給油所の減少は自動車ユーザーの利便性を損ない、日常生活にも大きな影響を及ぼします。また、給油所は一般の建物に比べて耐震性、耐火性等に優れた構造になっており、災害時においては“エネルギー供給の最後の砦”と位置づけられる存在でもあります。

 

ページ


NO.53号その他のコンテンツ
【交通安全Topics】
自転車の「ワープ左折」は道路交通法違反
交差点で赤信号になったとき、自転車が車道から歩道に上がり、左折して交差する車道に飛び出して走行を続けるワープ左折。このようなイレギュラーな走行を目にすることが多い。こうした走行は道路交通法違反にあたるとともに、高い危険性をはらんでいる。

【海外交通事情報告 第53回】
アメリカ カリフォルニア州で進む“CASE”対応
CASEの動きが活発なカリフォルニア州での取材・体験に基づいたレポート。中でもシェアリングサービスは、市民生活に深く根ざし、今や不可欠なものに。利用者の利便性を最優先した当局の対応には学ぶべき点が多い。

【人、クルマ、そして夢。 第22回】
交通コメンテーター 西村直人

サポカー補助金にみる社会受容性
先進安全技術のさらなる普及促進のための「サポカー補助金」。この成立を受け、“衝突被害軽減ブレーキ体験会”が各地で開催されている。このカリキュラムの社会受容性を高め、さらなる交通事故低減をめざすため、交通コメンテーターである筆者が提言する。